森

並木道の天井からこぼれる影が
砂利道に緑色の絵の具をこぼしていく


その中を私の姿が
影絵のようにゆらゆら
足どりは軽い
森の精はそっと私の頬に触れる


私は誰に出会うのだろう
私はまだキスだってしたことない


丘の切り株に腰を掛けて
町の姿を眺める
あの丘の向こうにも、そのまた向こうにも、人々の営みがあるのね
この空はどこまでも繋がっている
世界の裏側の知らない町まで


私は誰に出会うのだろう
私はまだキスだってしたことない


この世界のどこかに
まだ誰も見つけた事がない幸福が隠されているとしたら
それは何て素敵なことなんだろう


森が歌っている
清水が
小鳥たちが
岩の間をすり抜けていく風が
水晶のように澄み切って
ほんの短い間に永遠のように歌っている