なんかさ
こんな所でこんな事を書いて
卑怯者っぽくて嫌だけどさ


僕はやっぱり
彼女に出会えて幸福だよ


僕はこんな人間だから
こんなってどんな?ってもんだけども


彼女に出会うまで僕はゾンビになってたようなもんだったんだよ


欲しいものなんて今でも何にも無いんだけどさ
お金?
時間?
仕事?


生きていながら死んでいるような感じって言うのかな?
毎日血が冷えていくんだ
どんどん「うつろ」になっていくんだよ


それは例えば何と言ってみようか?


ねぇこんなのって想像できる?
動物園でさ
檻の中のアライグマがさ
ひとめにつかないように隅っこでうずくまっててさ
暗い目をしてさ
毛がいっぱい抜けててさ
時々あしもとに石ころを並べてさ
形になりそうになると
またそれを壊して
隅っこでじーーっと


檻の中の樹木はたぶんゾンビだと思うんだよね
檻の中の食事もゾンビご飯だな
檻の中の地面はゾンビ色だね


彼女がやったことは
そんなアライグマをそっと動物園の外に連れ出して
森の中のオレンジの樹を指し示して
こんなことを言った感じに似ていると思うよ
「ねぇ、あのオレンジに触ってみて」って


わかるかな?
そのオレンジの肌触りが
そのオレンジの香りが
そのオレンジのつやつやとした輝きが


にんげんが生きていくには
そんなオレンジがきっと必要なんだよ
そしてそれを指し示してくれる人がね


ぼくの天使さん
そろそろ寝るみたいだね
おやすみ
ゆっくり良い夢をみてほしいよ