誰か知らない誰かの仕事


ものすごく仕事に集中する時がある
食事も睡眠も性欲も何も関係なくなる時って言えばわかるかな
そんな時に僕が手がけている仕事は
具体的なイメージをもっている


そのイメージは
「誰か」から与えられたもので
僕のものではない
そして「その誰か」は会ったことない「誰か」だ


そんな時僕は
その「会ったことない誰かのアイデア」を盗もうとしているんだ
「その誰か」が誰かわからないのにである
ただ漠然と頭のなかにオリジナルの隠し撮り写真が存在して
そのイメージを奪い自分のものにしようとしているのだ


そして仕事も大詰め
朝日が昇ろうとする時に気付く
その誰かが誰なのかを


それは自分が理想とする自分なのだと気付く


そうやって挫折を溜め込み
少年は自分の宝物をひとつひとつお金に換え
世間の中に「自分の椅子を置く広さの土地」を買い求めます
次の「誰か」が通りかかるのを待ちながら


僕はムルソーになれなかった男なのか
やがてムルソーになる男なのか
それともムルソー自身なのか
それはまだ僕にもわかりません